いちご農家:越田健一さん・享子さん(大田市大田町)
兵庫県川西市から大田市に夫婦でIターン
【就農までの流れ】
平成18年8月 産業体験スタート
平成19年9月 就農
大学を卒業後、義肢装具を作り医療の現場へ
大学を卒業後、兵庫の義肢装具メーカーに就職し27年勤務しました。義肢装具を必要とする患者さんと医師の間を行き来し、肉体的にも精神的にも大きな労力を使い、限界を感じ48歳で退職しました。
当時はリストラの厳しい時代であり、再就職は難しく「自分で何か始めよう」と考えたのが農業でした。子どもの頃、祖父の畑の一角を自分専用に分けてもらい野菜作りをした楽しい思い出があり、仕事の合間にも近くの菜園で土いじりをしていたので、真っ先に浮かんだのが農業でした。
しかし、現実には自宅のある圏内農地を探すのは難しく、妻の故郷である大田で農業を始められないか相談したのです。妻の実家は兼業農家で米を作っており、機械設備も揃っていたため、まずは「米で食っていける」と考えたのです。ですが、実際には米価も安く面積の集約が難しいなど、米一本では無理なことが分かりました。ともあれ、夫婦でIターンすることになりました。スポーツジムに勤務していた妻も帰郷を決意してくれたのです。
米は生きるための手段、いちごは収入を得る手段
まず、農業を始めるにはどうしたら良いかと市役所を尋ねました。そこで農業改良普及部を紹介され、普及部専門員の方の勧めで、はじめに二人で県立農業大学校のUIターン希望者向けの農業研修を受けました。野菜を作ったことがあるといっても、これから収入を得るための農業をしていくわけですから、まずは色々学び、農家の見学や体験を通してどの作物にするか決めよと言うことになったのです。そして、研修を受けながら就農計画を練ったのです。
まず、一番の課題であった土地をどうするかということで、市や農業委員会などへ土地が借りれないか相談しましたが、新規就農の私たちには実績も無く、貸し手がなかなか見つかりませんでした。作物については、同じく新規就農でキャベツやぶどうを栽培している農家を見学しました。農業普及部の助言や農業大学校の研修先としてお世話になっていた農家さんの勧めもあり、採算性の良い「いちご」に決めたのです。
その一方で、土地はなかなか決まりませんでした。全く面識のない私たちが土地を貸り就農することが、一番大変だと言うことがわかりました。使っていない土地を借り有効活用できると考えていた私たちと違って、土地所有者にとっても複雑な思いがあったのです。最終的に、妻の親戚の土地を借りることができました。
農業をするには、土地の集約も重要です。分散した土地では移動や管理の効率も悪いですし、設備の大きさや規模も変わってきます。約20a(2反)の土地に、いちご栽培用として連棟ハウスを2棟確保できました。また、その隣の水田で米を作ることが出来るようになりました。
いよいよスタート!
土地が決まった平成18年の8月から、ふるさと島根定住財団のサポートを受け、市内のいちご農家で産業体験を開始しました。その年の11月から苗作りも始めました。生活していくためにはこの冬に出荷できる体制を整えたかったのです。苗の定植から逆算して新規就農の手続きまで10日しかない状況でのスタートでした。私が事務手続きや施設の準備に追われている間、妻が苗作りを担当してくれました。
研修、苗作りと平行して就農に関する補助金制度などを調べ、申請条件である認定就農と認定農業者の資格を取得しました。資金は自己資金と借入金で賄いました。資金を集めるのにも苦労しました。不慣れな手続きの連続でしたが、行政とのやり取りも多かった前職の経験を活かし強気で交渉しました。もちろん、自分一人で出来たのではなく、根気強く付き合い、私たちの就農が有利になるように取り計らって下さった普及部やJAのサポートがなければ難しく実現しなかったわけですから、本当にありがたく思っています。
土地が決まり、次は施設(ハウス)の建設です。いちごの栽培方法には、露地栽培と施設栽培があり、施設栽培にも、近年ではロックウールを使ったものや、ベンチ式の高設栽培など色々あり、資料を取り寄せ、先輩農家の意見を聞いたり、メーカーと話し実際に自分の目で見て、高設ベンチの点滴溶液栽培に決めました。
家族(妻)の理解
定住し就農するには、夢や憧れだけではだめです。
妻の故郷で協力を得て、再スタートした私たちでさえ、今やっと農業をする目途が立ったという状況です。
享子さん談:帰郷なんて考えもしていなかった私にとっては、現在の生活も主人と同じでIターンしたという感覚です。兵庫での仕事にはやりがいを感じていましたが、ストレスがたまり辛そうな主人にとって、農業が活力を持たせてくれるならばと、一緒に帰郷を決意しました。
実家は兼業農家ですが、私は農業にはノータッチだったので完全な素人です。初めての苗作りで悪戦苦闘しましたし苦労も多いですが、夫婦それぞれの思いを胸に今もがんばっています。就農によって、夫婦の絆が強まったと感じています。



